2023年のWBCが始まる前、「チェコって野球やるの?」
日本の野球ファンの多くはそう思っていたはずです。
もちろん私もそのひとりで正直、チェコと聞いてまず頭に浮かぶのはビールかプラハの街並みで、野球のイメージは全く皆無。
ところがWBCの東京ドームで、本業がありながら週末だけ野球をしているチェコの選手たちが、日本打線相手に一歩も引かない試合を見せて日本ファンの心を掴みました。
力の差は素人目にも明らかでしたが、佐々木朗希投手がデッドボールを当ててしまいその後のお菓子を持って謝罪するなど心あたたまるエピソードもあったりして、日本人にとっては好感度が非常に高いチームですよね。
今回は少し視点を変えて「チェコ野球のレベルって実際どのくらい?」「日本人がチェコリーグに行ったらどうなる?」「日本人がチェコでプレーしている例は?」という箇所を調べてみました。
チェコ野球のリーグ構成とは
まずはチェコ野球の土台から。
チェコのトップリーグはチェコ・エクストラリーガと呼ばれ、8チームが参加しています。
欧州野球の中ではオランダのホーフトクラッセ、イタリア・サンマリノのセリエAに次ぐ、欧州3番目のレベルを持つリーグとされています。
上位2チームは欧州チャンピオンズカップへの出場権も得られるなど、欧州内での地位は確立されつつあるんですね。
シーズンは4月から9月にかけて行われ、レギュラーシーズン(各チームと5試合、計35試合)を経て上位4チームがプレーオフへ進出。勝ち上がったチームが7試合制の「チェコシリーズ」で頂点を争います。
チェコ野球のリーグ構造
| 区分 | 詳細 |
|---|---|
| 1部(エクストラリーガ) | 8チーム/年間約40試合 |
| 2部(1.リガ) | 8チーム |
| シーズン期間 | 4月〜9月 |
| 選手報酬 | 外国人選手を除き基本無報酬 |
| 外国人枠 | 1チームあたり4人 |
ここで注目したいのが「外国人選手を除き基本無報酬」という点。チェコ代表の2023年WBC出場メンバーの職業一覧を見ると、消防士・宇宙関係エンジニア・電子技師・不動産業・警備員・金融業と、まるで違う世界の人たちが並んでいました。
確か代表監督でさえも本業を別に持っていて、全員が「真の二刀流」なんですよね。
ヨーロッパでメジャーなスポーツはやはりサッカーであり野球はそこまで浸透していないため、市場が大きくないためでしょうが、逆に野球が好きという点においての本気度がうかがえる実態です。
だってそうじゃないと貴重なフリータイムを野球の練習や試合に費やすって無理ですよ〜。
日本と比べたとき、チェコ野球のレベルはどのくらい?

引用元:毎日新聞
「で、実際どのくらい強いの?」というのが本題。
率直に言うと、チェコの国内リーグと日本のNPBとでは、大きな差があると思います。ただ、その差を「弱い」の一言で片付けるのは少し違うと思っていて、もう少し立体的に見る必要があるんじゃないかなとも。
WBCと国際ランキングで見るチェコの位置
WBSCの世界ランキングでチェコは15位前後(2023年11月時点)。ハジム監督は「今は15位前後。あと3段階、成長したい」と語っており、目標は世界トップ12入りとも言っていました。
一方、日本は世界ランキング1位。単純比較すれば約14〜15ランクの差があります。
ただ、2023年WBCの実際の試合で何が起きたかを思い出してほしいんですよね。チェコは日本相手に2回まで無失点。
120キロ台の球速ながら絶妙な配球で日本打線を翻弄する投球を見せました。試合には敗れたものの、チェコのスポーツマンシップと技術の巧みさは日本のファンに強い印象を残しましたよね。
投球スタイルの違いが面白い
チェコ代表のハジム監督は「米国の野球はパワー重視で、日本はより戦略的で繊細」と評しています。実はチェコの野球スタイルは、どちらかというと日本に近い傾向があるんですね。
チェコのサトリア選手が日本のバッターと対峙したとき、120キロの直球にスローカーブを交えて打者の目線を狂わせる投球をしました。力でねじ伏せるのではなく、知恵で打者を抑えようとするスタイル。
当時日本のSNSで「星野伸之」がトレンド入りしたことを覚えています。
130キロ未満のストレートで勝負するピッチャーは少なくともプロや国際大会にはなかなかいないですからね!
チェコリーグと日本野球のレベル差、3つの視点
日本人社会人野球選手がプレーしたら?
プラハの強豪チーム「テンポ・プラハ」でコーチとして活動した日本人会計士の斉藤佳輔氏の事例が参考になります。
彼は大学時代に軟式野球で球速130〜135キロを出し、チームを全国に導いた経験があるそう。
ただしチェコでは選手としての外国人枠(4人)を使えず、コーチとして関わることになりました。
このことから読み取れるのは、「日本の社会人野球レベル前後の実力があれば、チェコのリーグで十分に通用する可能性がある」ということですね。
実際に2024年には、独立リーグ出身の日本人選手2名がチェコのクラブチームに入団する動きもありました。
チェコ出身の選手が日本プロ野球に挑戦したら?
もう一方の視点も見てみましょう。
2024年、チェコ代表のマレク・フルプ選手が読売ジャイアンツと育成選手契約を締結しました。EU出身者として日本プロ野球初の契約選手という歴史的な出来事です。
フルプ選手自身は「日本のプロ野球は世界でもトップレベル。今は二軍の選手だが、いずれ一軍でプレーして、チェコにもプロとして戦える選手がいることを知ってもらいたい」と語っています。
つまり、チェコのトップ選手でも日本のプロでは「まず二軍から」というのが現実。
この差はやはり無視できないですね。
ただ彼自身、「少しずつ良くなってきている」と適応の手応えもあるようで、今後の活躍に期待です。
2026年WBCで見えてくること
今回のWBCには再びチェコが出場しています。2023年の躍進から3年、チェコ代表は2023年欧州選手権で史上初の銅メダルを獲得し、2024年大会でも再び3位に入賞しています。
「この3年間を無駄にしていないことを証明したい」というハジム監督の言葉には、確かな自信が滲んでいますね。
個人的にも実は韓国戦より台湾戦よりこのチェコ戦が楽しみな一戦なんですよね!
前回大会からチェコ野球に好感を持っているファンも多いでしょうし、プレー以外の温かい瞬間も見れるのではないかとワクワクしています。
日本人がチェコリーグでプレーする方法と現実
実は、チェコリーグには日本人選手が参加できる可能性があります。ただし、外国人枠は1チームにつき4人という制約があるので、この枠をどう使うかはチームの判断次第。
日本人選手が入れるかどうかはケースバイケースです。
チェコで野球を始めた斉藤氏のケースを見ると、最初は「練習に参加させてほしい」という一言から始まり、雑用係として認められ、最終的にコーチとして公式戦のベンチ入りを果たしたといいます。
華麗なキャリアではなく、地道な積み重ねで居場所を作っていった、ということですね。
チェコリーグ参加のリアルな条件
- 野球歴: 大学野球〜社会人野球レベルがあると通用しやすい
- 言語: チェコ語か英語のコミュニケーション能力が必要
- 費用: 基本無報酬のため、現地での生活費は自己負担
- ビザ: 長期滞在にはビザ申請が必要(チームが協力してくれる場合もある)
- 時期: シーズンは4月〜9月
実際に2024年には日本チェコ協会が間に入り、独立リーグ出身の日本人選手2名のビザ申請書類をプラハで受け取り、郵送するという形でサポートした事例もあります。公式なパイプが少しずつできてきているわけですね。
チェコ野球が急成長している本当の理由

引用元:チェコセンター東京
チェコ野球が世界15位まで到達した背景には、単なる「ファン増加」ではなく、構造的な育成の仕組みがあります。
「囲い込まない」文化が選手を育てる
日本の社会人野球では、チーム事情により優秀な選手がプロに出れないケースもあります。でもチェコは違うんですね。
選手にお金を払っていない以上、選手のキャリアを優先するのは当然の発想で、若手有望株はどんどんアメリカの大学へ送り出します。
テンポ・プラハは2024年に若手4人を一気に米国に送り出した結果、チームは戦力ダウンして2部に降格したことがありますが、「チェコ野球全体のレベルアップのためなら仕方がない」という考え方。
短期的な犠牲を払いながら長期的な地力を上げるという姿勢は、なかなかできることではないです!
日本との深い縁
チェコのハジム監督は「日本は心のふるさと」とまで言っています。約10年前に名古屋で中日ドラゴンズや大学チームを訪れ、「改善」の精神を学んだことがチェコ野球にも影響を与えているんだとか。
2023年WBCでの善戦後、千葉ロッテマリーンズは「マリーンズ-チェコ ベースボールブリッジプログラム」を立ち上げ、日本とチェコの野球交流が本格化しました。
栗山英樹前監督も2023年のヨーロッパ選手権視察のためチェコを訪問するなど、日本側からの関心も高まっていますしね。
ロッテでプレーしていた荻野貴司選手もチェコリーグへ移籍しましたし、日本の中でもロッテがチェコとの交流の架け橋になっている傾向があると思います。
チェコ野球と日本のレベル差まとめ
| 比較軸 | チェコ | 日本 |
|---|---|---|
| WBSCランキング | 15位前後 | 1位 |
| プロリーグ規模 | なし(セミプロ) | NPB12球団 |
| 1シーズン試合数 | 約40試合 | 143試合 |
| 選手の立場 | 兼業(本業あり) | プロとして専業 |
| 欧州内の位置 | 3番目のレベル | ― |
| 代表の国際大会実績 | 2023年WBC初出場、欧州選手権2年連続銅メダル | WBC3回優勝 |
チェコ野球と日本の差は確かにあります。NPBとチェコ・エクストラリーガを同列に語ることはできませんし、代表レベルでもWBSCランキングで約14ランクの差がある。
でも、注目すべきはその伸び率と熱量なんじゃないかなと。
前回大会で仕事をしながら週末だけ野球をしている選手たちが、日本と対戦し善戦。
その結果、チェコ国内で24万人が深夜に観戦し、翌日から少年たちが野球チームに殺到しました。
そしてその流れを受け、チェコのトップ選手が巨人と育成契約を結び、日本人選手がチェコリーグへ入団し、両国の指導者がお互いの球場を訪問し合っている。
チェコ野球はまだ成長の途中。でもその方向は、確実に上を向いていると思います。

